第46回 子どもに旨いものを食わせてたまるか 田中尚人
2009/05/20 水曜日

47歳にもなると、意に添わないものを食べるくらいなら、1食抜くほうが胃や味覚が汚れなくて済む、という境地になるみたいだ。
健康を気にせずに好きなものが食えるのが、あと10年あるかないか、という段階だからなのだろうか。
とはいえ、昨年、ビールの神様から「痛風」というコミカルな名の皆勤賞をありがたく頂戴して以来、脂と塩分、過食には注意せざるをえなくなってしまった。
ビールについては、せっかく皆勤賞を頂けたので、次なる永続皆勤賞を狙って日々励んでいる。
そうはいっても、少なくとも明るいうちのビール(これが旨いんだけどなぁ)だけは、自粛することにした。休日は勝手に解禁しているが。
夜のビールは、意識があるうちは絶対に止めないぞ。
なにしろ僕は、ビールを旨く飲むために働いているのだから。
ビールの味で、仕事や人間関係の充実具合のバロメータになるくらいだ。
家族のために働いてるんじゃないの?
いや、そういう優良パパもいるだろうけど、
僕は、笑顔でビールをプハァ〜ッとやるために働いている。
家族は二の次だ。
話を戻すが、そういう僕だって30代ぐらいまでは、腹が減れば牛丼だろうが、駅ソバだろうが、平気で食った。
とあるハンバーガーショップだけは、あの独特な脂の匂いがどうにも我慢できず拒否してきたけれど。
要するに、若いうちは、満腹になりさえすれば、なんでもいいのだ。
だいたい、旨いものを食わせても、子どもたちの記憶には残らない。
意外と記憶に残るのは、大失敗した料理だったり、縁日で売ってるようなナントカ焼きと称する怪しげで、何が入ってるのか分からないシロモノだったりするんだよね。
僕自身、小学生の頃の唯一の好物と言えば、登場して間もないチャルメラのインスタントラーメンだった。
母親は嫌がったが、それを食いたいために、退屈な祖父母の家まで切手の収集を言い訳にして自転車をこいだものだ。
祖母は元来が面倒臭がり屋だったので、もちろん素のまま。
もやしもほうれん草も何も加わらない。
でも、それが好物だった。カップラーメンはまだ登場していない時代だ。
だいたい、いつまでも腐らない酢イカやベロが変色するような妙な駄菓子を泣いて欲しがり、油と塩まみれのハンバーガーショップの揚げ芋に有頂天になる程度の味覚しか持ち合わせてないような子どもに、旨いものの味が分かるわけがない。(それにさ、値引きとキッズ向けのオマケなしじゃ勝負できないのかい?)
それは、例えはひどいが、食わずに三角コーナー投げるのと同じ。
三度三度をなるべく栄養バランスよく美味しく、満足に食わすことが育児の義務だと思いこんでいる方々も多いと思うが、毎食ごとにそんなに頑張ってたら、いつまでたっても育児から足を洗えなくなってしまう。
自分の時間や人生は、どこに置いてけぼりになるんだろう。
育児が人生?いえいえ、ママにそんな大事な人生をかけられたら、子どもが重圧で間違いなく歪むよ。
ということで
チビのうちから、高価な食材を使った料理を食わせても意味がないから、これは大人の食べ物、これは子ども向けの食べ物、とはっきりと差別したい。
面倒くさいけれど、お皿は各々分けたほうがいい、ということだ。
片付けが楽だからといって、旨いものを大皿に盛りつけ、子どもに手が届くところに置いてはいけない。
にこやかに惜しみなく与えることが親の役目ではなく、
居候としての分を知らしめ、「いつか大人になったら、あれを一口でいいから食べてみたい」と悔しがらせることも、大事な教訓と心得る。
常に食べたいものが食卓に並ぶ、なんて勘違いを捨てさせる。
だから「○○ちゃん、今日は何を食べたい?」なんて質問は絶対にしない。
「自分が食べたいものを作る」のだ。
黙っていても食べ物が食卓に並び、親よりも先においしいところを食べていい等と、大きな勘違いは、断固捨てさせるのだ。わはははは。
食は、最大の養育サービスではあるけれど、
昨日食わせてやったものを平気で忘れるし、たいして感謝もされないのだから、日常的には手抜きをして、ポイントで根性を入れる、ぐらいでいいのではないだろうか。
刺身、しゃぶしゃぶ、鰻などは、親がこそこそと子どもに内緒で食うものだ。
天ぷらは、手軽でいいけれど、まずは先に芋、なす、春菊などを大量に食わせて、連中の食欲が落ち着いてから、エビやキス、あなご、たらの芽など大人向けを揚げ始めれば、ガツガツ食われずに済む。それしかない。
子どものためばかりをおもんばかっていると、作ることが苦痛になってしまう。
食は生存と成長に欠かせない作業だけど、作り手である僕ら自身が楽しまないと続かないんだよね。
「今日は、おかず、これだけ?」なんて言われたら、
「あとは、梅干しがあるぞ。ああ、それから納豆だな」と涼しく答える。
僕と妻用の刺身に箸を伸ばしてこようものなら、
「二切れだけじゃ!」と、堂々とケチな大人を決め込む。
と、少々硬派ガンコオヤジ的な物言いをしてしまったが、
食べ盛りの高1長男に、旨いものばっかり、ごっそりと食べられてしまう恨みがこもってるのだ。
外食も田中家は月に一回あるかないか、それもどうしても作るのが面倒な時に近くの居酒屋みたいなチェーン店で食べるぐらい。ほとんど外食しない。
たまに上等なところで外食する場合は、出かける前にラーメンでもなんでもいいから、チープで腹が張るものを食わせておいて、食欲を頭打ちにした上で店に行けば、連中の興味はデザートにしか向かなくなるから助かる。
まぁ、だけどせっかくの連載なので、我が家のレシビをひとつだけ。
父が作るハーフメイドラーメン
ラーメンは、3食入りで198円ぐらいのスープ付き生麺で構わない。
タンメンがベストだけど、醤油味、味噌味とかでももちろんオッケー。
要するにインスタントをお店の味っぽくゴマかすわけ。
でも、我が家では大好評なんだよね。
麺を茹でる大鍋で湯を沸かす。
同時にヤカンでもお湯を沸かしておく。
大きめの中華鍋かフライパンにごま油をひき、かなり熱くしてからショウガとネギのみじん切りを投入。
半分焦げるぐらいまで炒めて香りを出し、豚肉(こま切れでもひき肉でも、なんでもいい)を加えて、キャベツ、もやし、椎茸、ニンジン、たまねぎなど、冷蔵庫野菜室にある余り物を多めに適当にカットして投入。
さっと炒めてから、ヤカンで沸かした湯をドンブリの分量分、熱い中華鍋にジュワジュワ〜っと注ぎ、ブラックペッパー、付属のスープを加えて強火で煮る。
同時に麺をゆで始める。このタイミングが大事。
ラーメンは段取り命なのだ。
2〜3分でラーメンが茹で上がる。ここから忙しい。
まず具を煮ている鍋を菜箸で押さえつつ、ドンブリにスープを注ぎ、
そこに茹で上がった麺をふわっと入れ、レードルで具を上にどっさりとのせて完成。
野菜から旨いダシが出るので、野菜は多めがいいと思う。
冷蔵庫内の整理にもなるし、想像以上に旨くなる。
炒めた野菜を後のせするのは、ダシが効かないのでNG。
余裕があれば、豆板醤と醤油、酢少々で和えた白髪ネギをどっさりとのせても旨い。茹でたわかめをどっさりのせてもいい。
ということで、しつこいけど、おさらい。
「子どもや若いものに、旨いものを食わせない」
こそこそ食うと、なぜか旨さが増すのだ。

1件
morimori
2009/05/22 07:29
「意外と記憶に残るのは、大失敗した料理だったり、...
...
だいたい、いつまでも腐らない酢イカやベロが変色するような妙な駄菓子を泣いて欲しがり、...程度の味覚しか持ち合わせてないような子どもに、旨いものの味が分かるわけがない」
本当にそうそう.ってうなづきながら読みました(自分も子どもの頃そうだったので).
それから,
「家族のために働いてるんじゃないの?
いや、そういう優良パパもいるだろうけど、
僕は、笑顔でビールをプハァ〜ッとやるために働いている。
家族は二の次だ。」
や
「だから「○○ちゃん、今日は何を食べたい?」なんて質問は絶対にしない。
「自分が食べたいものを作る」のだ。」
っていう姿勢は好感が持てますよね.
やはり,「自分が楽しんでいる」
からこそ
「周り(妻や子ども)も楽しめる」
訳ですから.
大人がまず,楽しみましょう!!!
やはり,本当の意味で
「情けは人のためならずです.」
*でも,美味しそうに食べてる子ども達を見ていると,
「俺って,このために働いているかも」
って思ってしまいます(笑).