第24回 パラサイトハズバンドをハメるシナリオ  田中尚人

2008/06/18 水曜日

イラスト

家にいる時は、食事の用意から片付け、風呂洗い、掃除洗濯ゴミ出し、子どもの身の回りのこと等、すべてを妻に依存寄生して生きている、あるいは女性はそのためにこそ生まれてきたものと思い込んでいる夫たち。
名付けて「パラサイトハズバンド」

今回はその続き。
「パラサイトハズバンド」、別の表現で言えば、「要領がいいマザコン男」、
あるいは「もう一人のコドモ」、「成長しない長男」、
英語だと「grown-up baby=大人になった赤ちゃん」、
要するにママに甘やかされて育った「困ったボクちゃん」たちの呼び名だ。

この生き物は、妻にとって厄介種であるだけでなく、子どもにも濃縮遺伝する恐れもあるので、可及的速やかに絶滅させたほうが、いい。

じつは当の夫も、テレビ見てビール飲んで風呂入るぐらいしか、家ですることがないもんだから、自分の居場所がない喪失感で、常にモヤモヤしているわけ。
家が楽しくないから足取り軽く笑顔で家路につけないのだ。

それが「おうちに帰りたくないんダヨ」病となって悪循環を引き起こす。
18時以降も会社でダラダラと仕事をしてるフリをし、それでもすることがなくなると、「付き合い」と称して社内の人間を巻き込んで酒を飲む。
できるだけ遅く帰って、妻や子どもとの接触を避ける。

照れ臭い話だけど新婚当初は、まるで逆だったはず。
「期待」や「楽しみ」があるから、男たちは鼻歌スキップ&最高に魅力的な笑顔で帰宅していたはずなんだよね。うふふふふ。

で、本題。
その撃退方法。イチコロのスーパーテクニックだ。
ここからは、男子禁制。特に夫に読ませてはいけませんよ。
(なんだか中学生の時の保健の授業みたいだね。)
それから、このレシピで夫婦喧嘩したとしても、責任取れませんからね。
あまり鵜呑みにしないでくださいね。

Step 1
言葉で追い込むと更に悪循環になる。

「○○さんのパパは、朝ご飯を作ってくれるんだって〜。ねぇ、どうしてアナタは作ってくれないの?」
「どうしてアナタは、子どもに絵本を読んでくれないの?」
「どうして早く帰ってこれないの?」
「結婚記念日なのに、どうして飲み会を断れないの?」

この「どうして○○してくれないの?」という言葉。
問いかけの形をとっているが、実は非難不満要請を質問文に文法変換しているにすぎない。

この文法活用がクセになると、きっと子どもにもこんな言い方をしちゃうんだよね。
「どうして、もっと早く起きられないの?」
「どうして、早く着替えられないの?」
「どうして、ちゃんと食べてくれないの?」
「どうして勉強しないの?」
「どうして大人しくしてくれないの?」みたいな、ね。

これは質問されても答えようがない。
ママとしては、こういう時は、答えが欲しいのではなくて、非難がしたいわけだから、なにを答えても堂々巡りになるだけだ。

まず、こうした表現を含め、言葉や議論でダンナを変えよう、「もっと夫と会話をしなきゃ」なんていう幻想や気負いはあっさりと捨てる。

話し合いでは絶対になにも変りっこない。
ヘタをすれば、「家に帰るとカミサンにガミガミ言われるから」と、「おうちに帰りたくないんダヨ」病を発症してしまう。

言葉で変えられないなら、どうすればいいのか。

Step 2
言葉がダメなら、これしかない。
実力行使だ。カラダを張るのだ。

いや、ダンナに飛び膝蹴りを食らわせたり、実家に帰るとか、離婚届を見せびらかす、ということではない。

Step 2-1
言葉でのコミュニケーションをしばらく閉鎖する。
寡黙な妻になる。そういう妻を演じる、ということ。

ここからは、すべてダンナをダマし、手玉に取るための演劇講座だと思ってもらいたい。女性の天性である二面性をフル活用するのだ。
図に乗ってやりすぎない限り、アドリブは自由だ。

「おはよう」「お帰りなさい」などの最低の挨拶はするのだが、「ご飯よ」「お風呂沸いてるわよ」「今日は夕食には帰るの?」などの心遣いの言葉はかけない。
当然食事中は、こちらからは話しかけない。
目は常に力なく、伏し目がちに。

男は、びっくりするほど沈黙に弱い動物だ。
きっとこうなる。
「どうしたんだ、最近。どっか具合わるいのか? なんか悩みでもあるのか?」

答え方の例
「あら、そう? ちょっと疲れがたまったのかな」
「なんともないわよ、なにか変かしら?」
「・・・大丈夫だから、心配しないで」

これで、男としては「妻の様子がちょっとおかしい」というランプが点灯するが、パラサイトハズバンド=(勝手に略してPHD)は、ママや妻というのはタフにできているから、ちょっとやそっとでは倒れたりしない、という思い込みが染み付いている。
とりあえず「早く寝なさい」なんていう口先だけのお言葉があるはずだ。

Step 2-2
「ごめんなさい」と、か細い声で言って、言われた通りに本当に寝込んでしまう。
大事なのは、皿洗いや洗濯、風呂など、すべて放り出して寝ること。

夫の対応
PHD予備軍→ 皿洗いなど取りあえずのフォローをしてくれる。しかし、幼稚園の支度、ゴミ出し等には気付かない。
PHD軽症者→ 何もしない。まったく何もしない。
PHD重症者→ 何もせず、なにも変らないどころか、シンクの洗い物、食卓の上などが更にひどくなり、散らかり放題。翌朝、「具合はどう?」と不満げな顔で質問してくるかもしれない。
PHD末 期→ 寝込んだ妻を置いて外食やパチンコに。


Step 3

翌朝、ふらつく足取りで起き出してくる。
か弱い声で「昨日はごめんなさいね」を繰り返しながら、皿洗いなどをわざわざスローな動きでこなす。決してテキパキやってはいけない。

当然、ダンナの朝食は遅れて間に合わなくなる。(もちろん、わざと、ね)
「ごめんなさい・・・」と申し訳なさそうにつぶやく。
「病院に行ったほうがいいんじゃないの」とまたもや口先だけのお言葉を受取る。
腹を空かせたダンナは、恨めしそうな顔をしてご出勤。

ダンナが出かけたら、腰に手をあてて腹の底から「わははははは」と高らかに笑う。
笑いたくなくても、笑ってみると、案外気持ちがいいことに気がつくはず。
次のミッションに備えて、しっかりと美味しいものを食べておく。

これを数日間繰り返す。
必要なら、少し元気になって、また具合が悪くなって、という波状型の演技を披露してあげよう。
焦って功を急いではいけない。
今までの苦労を思い出せば、数ヶ月ぐらいの長期作戦でも大丈夫なはずだ。
環境適応力がないオトコは、急には変れないので、ゆっくりと駒を進める。
家が荒れたりするのは、この際ガマンするしかない。

とはいえ、これは重症患者までの話。
末期の患者向けのテクニックは、悪いけど思いつかないや。
僕が妻だったら、そんなヤツは早めに捨てるね。

Step 4
いよいよ、勝負に出る。
ある日の夕方、ダンナの会社か携帯に電話を入れる。メールではなく、電話。
「今朝から、どうも具合が悪くて台所に立てないの。子どもたちの夕食も心配だし・・・」と独り言のような話しを短くする。
場合によっては、話している途中でわざとブツッと切る。

さて、どんな化学反応が起こるだろうか。
PHDたちには、妻がどうも変、という断片情報が積み重なっているはずだ。

早く帰ってきてくれたはいいけれど、子どもを連れ出して外食というパターンもあるだろうが、お小遣いにも限界があるはず。毎回は続かない。
根気よく待てば、自宅で作るしかないことに気がつく。
最初は、冷蔵庫や食料ストックが分からないから、新たに買ってくる。
だけど、これも根気よく待てば、あるもので作れば財布が痛まないことに気がつくはず。

このようにして、ゆっくりと、じわじわと台所に引きずり込む。

大切なのは、何が出てきても「まずい」と言ってはいけないこと。
まずは、ダンナが一口二口食べるのを見届け、人間が食えるシロモノかどうか確かめた上で、食べ始める。
旨ければ、今までのイジワルな演技を一時中断して、素直に感激すればいい。
言葉だとわざとらしくなりそうなら、「お代わり」をするだけで、単純な男なら胸がプルプルしてしまうはずだ。

まずい場合は。
「すご〜い。美味しそう。ん、だけど、ちょっとだけ油っぽくない?」
「どうしてこんな料理が作れるの? 子どもには難しい味かもしれないけど、私は好き」
「え〜、初めて作ったのに、こんなに上手にできるの?」
いやぁ、歯が浮きそうなセリフだね。

だけど、さりげなく誉めることが、重要なポイントなのだ。
子どもたちとも、このポイントは示しあわせる必要がある。

仮にまずくて、満足に食べられなくなったとしても、あるいはこのミッションのために一回や二回程度食事を抜いたって、健康に大した影響はないはず。
中国四川省やビルマの被災者、アフリカの難民の子どもたちに思いをはせながら眠れないくらいの空腹を子どもに経験させることも大切だよ。
豊かに食べさせることだけが子育てじゃないんだから。
なにしろこれから死ぬまで付き合う相手の教育ミッションなのだ。
子どもにとっても、パパがいい手本になるかどうかの大事な瀬戸際なのだ。

Step 5 応用編
とにかく、自然な演技を心がけること。
芝居のバリエーションとしては、

1. 一時的な味覚障害を装い、塩気ゼロのひどいものを食わせてみる。
自分は食欲がないからと言って、食べないが、別の時間にこっそり腹ごしらえすることを忘れない。
2. 医者の診断ということにして、女性特有のホルモンバランス系の症状を訴える。
例えば甲状腺低下症など。
3. 腰痛、手首のねんざなど、見た目に分かり辛い症状を訴える。
腰痛を装う場合、うまくいけば、タダでマッサージしてもらえるかも。
4. 低血圧症を装い、朝晩は全ての動作がスローになる。

他にこれでうまくいった、というケースがあれば、ぜひ投稿ください。

※ 注意点
意図がバレるので、急に元気にならないこと。 調子に乗って、悪ノリしないこと。 あまり長期間これをやり続けると、男は精神的に脆いので、擦り切れてしまう恐れもあり、手加減も必要。

以上、長いシナリオになってしまった。
男性側の僕としては裏切り行為も甚だしいわけで、これを公開するのは心がちょっとだけ痛むけど、似たようなことを妻にやられて、見事にダマされた実際の経験談なので、試してみる価値は大いにあるはず。皆さんからのレポートをお待ちしています。

ちなみに、本当に甲状腺の病気(実は僕の妻がそうなんです)だったり、味覚障害、うつなどの不自由を持っている方にとっては、ずいぶん失礼な話だったはず。 この場で先にお詫びします。

今回で僕の受け持ちは一旦終了。
秋口にまたもや復活する予定なので、ネタのリクエスト、お待ちしています。

この商品へのコメント一覧

3件

ビスケット

2008/06/23 10:26

スーパーテクニックの続き、待ってました!(笑)
お菓子を買いだめして、試してみようかしら・・・。
「どうして早く着替えられないの」とか「どうして~できないの?」って、私も口癖になってました。
それから、「豊かに食べさせることだけが子育てじゃないんだから」という田中パパの発言、わたし、いままで考えたこともなかったけど、深い言葉だと思いました。
次の連載、楽しみにしています。

絵本も何だか意味深。気になりました。

タフネス・ママ

2008/06/25 14:02

タフネス・ママです。
わたし本当に『具合が悪いから」って寝込んでたら、「いつまでだらしなく寝てんだよ」って主人に言われたことがあります。
ひどいでしょ。そんな主人には、仮病も効かない気がしますが、今度は主人の目の前で気絶してみようかしら。

うらら

2008/07/01 21:16

やっぱり仮病か家出でしょうね。
私、プチ家出ならしたことありますよ。